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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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外科矯正(顎変形症)の診断へのよくある誤解

外科矯正(顎変形症)の診断への誤解1外科矯正(顎変形症)の診断への誤解2

当院では外科矯正の治療を比較的多く行っておりますが、「外科矯正が必要か診て欲しい」「顎変形症か調べて欲しい」などのお問い合わせをいただくことがあります。外科矯正を保険適応で行うには「顎変形症」という病名が必要になるのですが、実は「顎変形症」に明確な診断基準はありません。今回は顎変形症の診断について説明させていただきたいと思います。

「顎変形症」というのは、顎の変形がある(顎に歪みがある、顎の長さが極端に長い、顎の長さが極端に短い等)ことを指す保険病名です。しかし一般的な保険病名と異なるのは、検査してどこかの部分の長さや角度の数値が基準値より外れているから、全て「顎変形症」になるというわけではないのです。矯正の検査では、平均値と標準値というものが存在します。平均値とは文字通り日本人の「平均的な値」を示しているのに対し、標準値とは分析値が平均値からどれくらい離れているか、その「ばらつきや散らばり具合」を表す値で、標準偏差(SD)で表されます。得られたデータが±1SD内にあると標準値内と表現し、±1SDを超えていると標準値外と言います。それでは分析値が標準値外になっていると、すべて顎変形症になるかというそういうわけではないのです。

実は分析値が標準値外になっていることは、しばしばあります。骨格の長さや角度が標準値外になっていると、咬み合わせのずれもそれだけ大きくなっていることが多いのですが、必ずしもそうとも限りません。骨格的なずれが大きいのに咬み合わせのずれは軽度な場合や咬み合わせのずれは大きいのに、骨格的なバランスはそれほど問題ない場合なども存在します。極端な例では、咬み合わせは上顎前突傾向なのに、骨格的には下顎前突傾向などということも存在します。骨格的なずれと咬み合わせのずれは必ずしも一致するわけではないのです。骨格的な不調和が大きくても、咬み合わせのずれがあまりない場合は、顎変形症とはならないのです。逆に骨格的なずれは軽度でも、咬み合わせのずれが大きく、通常の矯正治療では改善不可と考えられる場合、外科矯正の適応となり顎変形症と診断されます。

顎変形症という病名は、分析した結果の数値で決まっているわけではなく、例えば「顎が出ているのを治したい」とか「顔が歪んでいるのが気になる」「顔が長いのを短くしたい」等のように患者さんのご要望(主訴)が歯並びや咬み合わせの問題ではなく骨格的な問題である場合や、咬み合わせのずれが大きく、通常の歯列矯正では正しい咬合関係にできないと診断された場合、口元の突出が顕著で抜歯して矯正したとしても十分に口元を改善できない場合等に外科矯正の対象となり、「顎変形症」という病名が付くという特殊な保険病名なのです。

ここで混乱が起こるのが、外科矯正が必要と診断するかどうかは先生によって異なるということです。例えば大きな咬み合わせのずれがあった場合に、ある先生は通常の矯正治療で治せるので顎変形症ではないと判断する一方、別の先生は通常の歯列矯正ではうまく治らない可能性が高いで、外科矯正(顎変形症)の対象ですと意見が分かれてしまうことがあり得えます。顎変形症の対象になるかどうかは、患者さんの主訴や咬み合わせの改善に外科手術が必要と担当の先生が判断するかどうかにかかっているわけです。もちろん担当の先生が外科矯正が必要と診断したとしても、最終的にその治療のを受けるかどうかは患者さん次第です。しかし外科矯正の適応と診断されるほどの大きな咬み合わせのずれがあった場合に、外科手術なしで治療した場合、治療は非常に難易度が高くなり、理想的な咬合関係にできない可能性も十分にあり得ます。仮に外科手術無しで治療可能と診断され、中途半端な咬み合わせで終了となってしまい、後で後悔するようなことがないように、外科矯正するかしないかの判断は、利点欠点をよく理解していただいた上で慎重にしていただきたいと思います。

2026月07月12日

院長 大西 秀威