Column

院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

Archive List

矯正治療に手遅れはありません

woman_column000033「何歳までに治療を始めないと手遅れになりますか?」「今すぐ治療を始めないと手遅れになると言われたんですが」などとお問い合わせいただくことがあります。よく誤解を受けることなのですが、矯正治療には治療を開始するのに適した時期というのは確かに存在しますが、その時期を逃したからといって、手遅れということはありません。もし治療する時期を逃して、もう手遅れですということがあるとしたら、当院で治療している大人の患者さまは、みな手遅れなのに治療しているということになってしまいます。

そもそも「手遅れ」という言葉はどういう意味かというと、手持ちの三省堂・新明解国語辞典には「事件の処置や病気の手当てなどが遅れて、成功・回復の見込みが無くなること。」と書いてあります。「手遅れ」とは「成功・回復の見込みが無くなる」ことですので、不謹慎な例えになりますが、ガンの発見が遅れてもう治療手段がなく、発見されたときには手遅れだったということはあるかも知れません。しかし、歯列不正の発見が遅れて、治療手段がなく、手遅れですということがあるでしょうか?あるとすれば、歯周病などで骨がやせてしまい、矯正治療するにはリスクが高すぎますとか、残っている歯の数が少なすぎて、矯正治療できませんとかいった場合などが考えられますが、手遅れというのとは少し意味合いが異なります。以前のコラムにも書きましたが、健康な歯と歯茎(骨)があれば、矯正治療はいくつになっても可能です。

歯科医院のホームページの中には、「矯正治療は○○歳までに始めないと、手遅れになります」などと脅し文句のようなことが書いてあるページがあります。これは正確にいうと「○○歳までに始めないと、(歯を抜かない治療をするには)手遅れになります」という意味だと思います。確かに小さい頃から治療を始めた方が、歯を抜かなくて治療できる可能性は高くなります。私も歯はできるだけ抜きたくないので、お子さんの矯正治療をお考えの親御さんには、早めにご相談いただくようにお伝えしています。

しかしながら、最近では装置や材料の進歩により、大人の方でも歯を抜かないで治療できることがずいぶんと多くなってきています。また小さい頃から治療を始めると、成長を診ていく必要があるため、どうしても治療期間は長くかかってしまいます。親御さんの中には歯を抜いてもいいから、できるだけ治療期間を短くしたいとお考えになる方もおられます。私としてはできるだけ歯を抜きたくはないですが、それはそれで間違いではありませんし、一つの考え方だと思います。矯正治療するのに適した時期というのはありますが、いつしなければいけないというものはありません。

矯正治療を成功させるには、患者さまの協力が不可欠であることを以前のコラムに書きました。矯正治療には患者さまご自身の治療に対するモチベーション(やる気・積極性)がとても重要になります。私は「治療をしたい」と思ったその瞬間が、矯正治療にとっては最適な治療開始時期だと思っています。もちろん、ブラッシングの問題や舌・唇の癖、成長・発達段階などにより、すぐには治療開始できない場合もあります。しかし、いくつになっても手遅れということはありません。矯正治療したい(必要かな)と思われたら、お気軽にご相談いただきたいと思います。

2014月05月25日

院長 大西 秀威