Column

院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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歯の型取りが平気な人と苦手な人がいるのはなぜ?

正しい舌位低位舌

ホームーページがリニューアルされてからは初めてのコラムになります。ホームページリニューアルの際には、当院に通って頂いていた患者さんや今通っていただいている患者さんにご協力いただきました。本当にありがたかったです。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。皆様に支えられて大西矯正歯科クリニックは成り立っているんだなあと改めて感じました。皆様に少しでもいい治療を受けていただけるように今後も頑張っていきたいと思います。

今回のコラムは苦手な方が結構おられると思うのですが、歯の型取りについてです。歯の型取りは、歯を削る機械のキーンという音とともに歯医者さんで嫌われるものの一つだと思います。当院では口腔内3Dスキャナー(アイテロエレメント)を導入していますが、歯の型取りがなくなったわけではありません。スキャンした3Dモデルをパソコンの画面上で見るのと、型取りした歯型を実際に見るのとでは、見え方や得られる情報が異なるため、型取りを完全になくすことは今のところできないなというのが実情です。

歯の型取りがすごく好きという方はあまりおられないとは思いますが、全く苦にならない方とすごく苦手という方がおられます。特にお子さんでは苦手な方が多いと思います。型取りと聞くだけで気分が悪くなったり、歯医者に行きたくないと言い出すお子さんもおられます。歯の型取りが平気な方と苦手な方の差はどこにあるのでしょうか?

歯の型取りで気持ち悪くなるのはどの時かというと、型取りの粘土(印象材と言います)やトレイが上顎の天井部分(口蓋と言います)あるいは舌の上部分(舌背と言います)に触れた時です。この時に「おえっ」となる方とならない方の差がなぜできるかというと、普段の舌の位置が異なるからです。通常、人がリラックスしている時、口を閉じて呼吸は鼻で行います。鼻呼吸していると、舌は自然と上に持ち上がって口蓋に舌背がくっついた状態になります。これが正しい舌の位置です。しかし、口呼吸をしていたり、口をポカンと開けていると、舌が上に上がらず口蓋と舌背が離れた状態になってしまいます。これを低位舌と言います。

舌が正しい位置にあると口蓋と舌背は常に触れていますので、口蓋や舌に何かが触れても特段気持ち悪くなったり、不快な気分にはなりません。普段から口呼吸をしていて低位舌になっていると、口蓋や舌は常に離れているので触れるということに慣れていません。そのため、その部分に何かが触れると敏感に感じてしまい、気持ち悪くなったり「おえっ」となったりしてしまうのです。舌の位置が悪いと歯並びにも影響が出て不正咬合になりやすいため、矯正治療に来られる患者さんは歯型を取るのが苦手という方が必然的に多くなってしまいます。特にお子さんの場合、大人の方に比べアレルギーや鼻炎などで口呼吸になってしまっていることが多いため、型取りが苦手というお子さんがどうしても多くなってしまいます。

矯正治療では診断や装置の作成などで歯の型取りは避けて通れません。もしこれから矯正治療を始めようと思われている方で歯の型取りが苦手という方は、普段の舌の位置が下がっていて、不正咬合に原因になっている可能性が高いです。当院では舌の位置を治す口腔筋機能訓練(MFT)というトレーニングを行っています。舌の位置を改善できれば、治療後の後戻りのリスクを減らすことができますので、苦手な型取りを克服してもらえるように頑張っていただきたいなと思います。

2019月07月15日

院長 大西 秀威