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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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矯正治療は何歳頃までできるの?

前回のコラムで矯正治療はいつ頃から始めるのがいいのかというお話をしました。今回は何歳頃まで矯正治療はできるのかというお話をしたいと思います。

「若い頃は歯並びは綺麗だったんだけど、最近歯並びがゆがんできた気がする」「以前から歯並びは気になっていたけど、治療する機会がなく、今からでも治療できるのかな?」などと思われる方もおられることと思います。矯正治療はいったい何歳頃までできるのでしょうか?

結論的に言うと、いくつになっても矯正治療は可能です。

当院では50歳代や60歳代の患者様もおられます。僕が参加した講習会で、70歳代の方を治療した症例を見たこともあります。しかし、どんな方でも治療可能なわけではありません。治療するには条件があります。それは、

  1. 健康な歯がある程度残っていること
  2. 歯ぐきが健康な状態であること
  3. 歯ぐきの骨がしっかりと残っていること

などです。

矯正治療は歯並びを整えていくのに、歯を支えにして動かしたい歯を動かします。歯それも健康な歯が相当数残っていないと、動かしたい歯を動かすことが出来なくなります。最近はインプラントを利用した矯正治療が一般的になってきていますので、歯の数は少なくても矯正治療は可能ですが、ある程度の本数の歯が残っていないと、矯正治療の目的や効果は限定的になってしまいます。

中高年の方を治療するうえで問題なのは、若い頃に比べ抵抗力が低下しているということです。抵抗力が落ちているとどんな問題が起こるかというと、歯垢や食べかすが歯の周りに残っていると歯ぐきの病気(歯周病)にかかりやすくなります。

矯正装置をつけると、ブラッシングが大変になるのは、どの年齢の方でも同じですが、中学生や高校生であれば歯ぐきの炎症(歯肉炎)で済む場合でも、30歳代半ば以降ぐらいになると、歯ぐきの炎症が中の骨(歯槽骨)まで波及し、歯周炎に進行してしまう可能性が高くなります。歯周炎になると歯槽骨が痩せてしまい、治療後も歯が揺れる、歯並びが安定しない、最悪抜歯しないといけないなどの問題がでる可能性があります。そのため、日頃からブラッシングに気をつけ、健康な歯ぐきを維持していただくことがすごく大切になります。

若い頃は歯並びは綺麗だったけど、最近前歯が出てきたあるいは歯と歯の間に隙間が出来てきたというような場合は、歯ぐきが歯周病(歯周炎)になっている可能性があります。見かけ上歯はたくさん残っていても、レントゲンをとってみると歯槽骨が大変痩せていて、歯を動かせる状態ではないということもありえます。

このような場合には歯周病専門医を紹介させていただきますので、まずは歯周病の治療を徹底的に受けていただき、歯ぐきの状態が改善・安定してから矯正治療を行うようにします。

歯や歯ぐき、骨の状態が健全であれば、矯正治療に年齢は関係ありません。逆に言うと、例え年齢は若くても、歯や歯ぐきの状態が悪ければ、矯正治療はできません。

僕が学生だった頃の教科書には、矯正治療の禁忌症の一つに歯周病が含まれていました。今では歯周病専門医との連携により歯周病は禁忌症ではなくなっています。むしろ歯周病の改善のために積極的に矯正治療をすることもあります。しかし、歯周病の方の矯正治療は慎重にしないといけないことは今も変わりません。 中高年の方では体の新陳代謝が低下しているため、中学生や高校生に比べると骨の改造のスピードがゆっくりで、治療期間もやや長くなりがちです。抵抗力も下がっているため、ブラッシングがしっかりと出来ないと、矯正治療中に歯周病に罹患・進行してしまうリスクは余計に高くなってしまいます。

自分は矯正治療可能かなと疑問に思われる方は、当院までお気軽にご相談ください。

2012月09月17日

院長 大西 秀威