矯正治療では、どのような治療方法を選択するにしても、上下左右対称に治療していくのが原則です。例えば歯を抜いて治療する場合、上下左右1本ずつ歯を抜いて、上下の歯の数を合わせて左右対称に治療していくことが多いです。しかし、上顎前突ですごく上の前歯が出ている場合や骨格性の下顎前突で外科矯正を行う場合、上顎の歯だけを抜いて治療することがあります。上顎だけ歯を抜くと上下の歯の数が変わってしまうけど大丈夫?と疑問に思われる方もおられると思いますので、今回はそれについてご説明したいと思います。
正しい咬み合わせはどんな状態かというと、横から歯並びを見たときに、上下の歯が真っ直ぐ縦に咬んでいるわけではなく、ジグザグに咬み合っています。歯の山の部分が歯と歯の間の谷部分に互い違いに嵌りこむことによって、咬み合わせは安定するようにできています。通常、矯正治療する際は、横の歯がジグザグに咬み合う状態を目指して治療します。例えば、抜歯をして治療する場合でも、上下の歯を同じ本数抜いて、横の歯が互い違いに咬み合うように治療していきます。
しかし、上顎前突がひどい場合や下顎前突の外科矯正の場合、上顎の左右の小臼歯だけを抜去して上の前歯を後ろに引っ込めていく治療をすることがあります。上顎だけ歯を抜きますので、上下の歯の数は変わってしまいます。それで咬み合わせがなぜ大丈夫なのかというと、前歯を引っ込めると同時に奥歯も少し前に引っ張るようにして隙間を閉じていき、奥歯が本来の位置より前にずれた状態でジグザグに咬み合うように治療していきます。こうすることにより、前歯は引っ込み、横の歯もしっかり咬み合い、なおかつ咬み合っていない歯もない安定した咬み合わせができます。
厳密に言うと、上顎だけ歯を抜きますので上下の歯の数が変わってしまい、本来の咬み合わせからするとずれた状態にはなってしまいます。しかし、咬み合わせという観点からすると全く問題ない安定した状態になりますので、なんら問題はありません。上顎だけ歯を抜くのは、矯正治療ではよく行う方法ですので、ご安心ください。
2016月05月20日
院長 大西 秀威