矯正治療を始めて一番大変になるのがブラッシングだと思います。私もかつて矯正治療を受けていましたが、歯磨きには大変苦労しました。
矯正装置は以前に比べ小型になり、ブラッシングしやすくなってきていますが、装置周りに食べかすや歯垢などがたまりやすいことには変わりありません。ブラッシングを正しくできないと、治療中に虫歯ができたり、歯茎に炎症が起こる可能性があります。よごれがたまりやすい歯と歯の間やワイヤーの下、ブラケット周りの部分には特に注意が必要です。
ブラッシングの基本は歯の面に対して90°に毛先を当てて磨くことです。また歯ブラシをじゃんけんのグーのように握りしめて持ってしまうと力が入りすぎになってしまいますので、鉛筆持ちをするようにします。これは装置をつけてもつけなくても基本的に変わりません。
歯磨きをする際は、まず歯の面に対して90°に毛先を当てて、装置と歯茎の間の部分、装置の部分、装置と歯の先端の間の部分を磨きます。このとき勢いよく横磨きするのではなく、一部分ごとに細かく細かく歯ブラシを動かすイメージで磨くようにします。特に歯と歯茎の間の部分を磨く際に力が入りすぎてしまうと、歯茎が逆に傷ついて下がってしまう原因になります。これを歯肉退縮といいます。歯肉退縮が進むと、知覚過敏になったり、歯が長く持たない原因になります。
歯に対して90°に毛先を当てて磨いただけでは、装置の周りやワイヤーの下の部分のよごれをとることはできません。そのため、次に歯ブラシを45°傾けて装置の上部分を磨きます。そして、歯ブラシを45°傾けたまま、ブラケットとブラケットの間のワイヤーの下部分に毛先を入れるようにして磨きます。このとき、ワイヤーの下に毛先が入っていることを確認しながら磨くようにします。
次に反対側から歯ブラシを45°傾けて、装置の下部分を磨きます。反対側からもワイヤーの下に毛先を入れて磨くようにします。歯ブラシは一箇所づつあくまでも細かく細かく磨きます。
ここまで磨けば装置周りはかなり綺麗になりますが、細かいところにはやはりよごれが残ってしまいます。そのため、仕上げ磨きに歯間ブラシを使用します。装置周りやワイヤー下に歯間ブラシを通し細かい部分のよごれをとります。
装置がついていると少々使いにくいですが、最後に歯と歯の間にデンタルフロスを通すとより完璧です。
装置がつくと歯磨きはかなり時間がかかるようになりますし、歯ブラシもすぐにダメになってしまいます。でもブラッシングをおろそかにしてしまうといろいろな箇所が虫歯になったり、歯周炎になったりする可能性があります。綺麗な歯並びはあくまでも健康な歯と歯茎があってこそです。矯正治療が終わった頃には、歯が虫歯で継ぎはぎだらけになっているというのでは、綺麗な歯並びとはいえません。
ブラッシングは日々の患者様のケアが大切になります。時間は少々かかりますが、決して難しいことではありません。当院では治療前に、歯ブラシや歯間ブラシなどの歯磨きセットをお渡ししています。矯正装置をつける前に必ずブラッシング指導を受けていただき、合格してからでないと装置を装着しないようにしています。指導内容をしっかりと守っていただければ、治療中に虫歯や歯周炎になることはないと思います。私が矯正治療を受けている時はまだ高校生でしたが、虫歯にならずに矯正治療を終えることができました。
2012月07月26日
院長 大西 秀威