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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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矯正治療は必要?

新年明けまして、おめでとうございます。
今年も大西矯正歯科クリニックならびにこのコラムをよろしくお願いいたします。

当院に来られる患者様からよく受ける質問があります。「矯正した方がいいですか?」「矯正は必要ですか?」などです。

日本人の方で歯並びにガタガタがなく、歯の大きさや形、数に問題がなく、奥歯も理想的に咬んでいるいわゆる「正常咬合」の方がどれぐらいおられるかというと、データにもよりますが1~20%程度ではないかと思います。歯並びを気にして矯正歯科医院を訪れる患者様は、まず間違いなく何らかの不正咬合をお持ちですので、答えは「イエス」となります。

しかし、不正咬合は病気なのかといわれると、「?」となってしまいます。
日本には世界に冠たる国民皆保険制度というものがあります。国民すべてが何らかの医療保険制度に加入し、病気やけがをした場合に医療給付が得られる制度ですが、顎変形症(外科矯正)や口唇口蓋裂の治療以外、矯正治療は原則として保険適応外です。すなわち不正咬合は病気とは考えられていないのが現状です。
病気ではないということは、乱暴に言うと不正咬合を放っておいても、ただちに心や体に不調や不都合を生じないということになります。ですので、よほどひどい不正咬合でもない限り、私は治療するべきか否かは最終的には患者様ご自身でご判断くださいとお答えしています。蛇足ながら、治療しないとえらいことになるとすごく強調する歯科医院があると聞きますが、眉唾ものと思います。

では、矯正治療はしてもしなくてもいいのかというとそうではありません。
不正咬合を放置しておくと起こりうるリスク(問題)としては以下があげられます。

  1. 虫歯や歯周病になりやすい
  2. 発音・発語の問題
  3. 審美性(外見や見た目の美しさ)の問題
  4. 精神的(歯並びを気にして思いっきり笑えない、積極的になれないなど)な問題

があげられます。

歯並びにガタガタがあると、ブラッシングをこまめに行い、定期的に歯科医院で専門的なケアを受けるなど口腔衛生状態によほど注意しておかないと、虫歯や歯周病のリスクが非常に高くなってしまいます。矯正治療したからといって、ブラッシングが適当でかまわないわけではありませんが、口腔衛生状態を清潔に保ちやすくなります。

また前歯が極端に内側に引っ込んでいたりすると、発声の際に舌があたり発音・発語が正確にできないこともあります。

欧米に行くと、非常に多くの子供たちが矯正治療を受けていて、驚くことがあります。キリスト教圏の国々では、歯並びにガタガタがあると「vampire teeth(悪魔の歯)」といわれ、非常に嫌われます。矯正治療を受けることにより、金銭的余裕があることを示すことにもなり、矯正治療を受けることが一種の社会的ステータスになっています。アメリカのテレビや映画を見ていると、歯並びにガタガタがある人はほとんど見かけません。生まれつき歯並びが綺麗というわけではなく、多くの人が矯正治療を受けているからです。
日本でも歯並びに対する意識が徐々に高まっており、テレビを見ていても以前のように歯並びの悪い芸能人は少なくなってきています。日本でも歯並びが美しいことが社会的に望まれるようになってきています。

歯並びが悪いことを気にして思いっきり笑えない、積極的になれない、写真を撮りたくないなどといわれる方もおられます。矯正治療を終えられた患者様が非常に明るくなったり、メイクが変わって非常に綺麗になったりする場面を何度も見てきています。内面的な部分まで変えられる矯正治療の力はすごいなとしみじみと思うとともに、矯正歯科医になってよかったなと思う一番の瞬間です。

2012月01月05日

院長 大西 秀威