明けましておめでとうございます。
本年が皆様にとって素晴らしい一年となることを心より祈念いたしております。また、今年も大西矯正歯科クリニック並びにこのコラムを何卒よろしくお願いいたします。
前回のコラムで書かせていただきましたが、ほとんどすべての患者さんを歯を抜かずに治療することはほぼ不可能と思います。これは矯正歯科治療を専門に行う歯科医師の間での共通認識になっていると思います。日本人に比べ顎の大きさや顔の形態などに余裕があり、非抜歯での治療範囲が広いアメリカ人でさえ困難であるのに、いわんや日本人ではということです。
ところがマウスピース型矯正装置(インビザライン)の普及に伴い、最近では非抜歯治療が増加しているように感じます。マウスピース型矯正装置(インビザライン)では、ワイヤータイプの装置に比べ抜歯治療が可能な症例が限られるため、望むと望まざるにかかわらず非抜歯治療が中心になります。また非抜歯での治療を希望される患者さんが多いのも事実ですので、ある意味利害が一致するため、従来では抜歯が必要とされていた患者さんが、マウスピース型矯正装置(インビザライン)では非抜歯で治療するという診断になってしまう場合があります。
本来ワイヤータイプの装置で治療するかマウスピース型矯正装置(インビザライン)で治療するかは、治療の手段であって目的ではないはずです。どんな手段で治療したとしても目標は変わってはいけないはずですが、手段が目的化してしまうと治療目標がぶれてしまい、本末転倒になりかねません。歯が並ぶ隙間が足りなくて、ガタガタになったり、前歯が飛び出しているのに、そのまま無理やり歯を抜かずに並べてしまうと、色々な弊害が出てくる可能性があります。無理に「歯を抜かない矯正治療」を行った場合に、どのようなリスクやトラブルが起こりえるかと言うと、
- ●口元がより出てしまった
- ●出っ歯が治らなかった
- ●前歯がより斜めになった
- ●口が閉じずらくなった
- ●治療後に後戻りが起きた
- ●前歯がしっかりと咬めなくなった
- ●咬み合わせが合わなくなった
- ●歯茎が下がった
- ●歯と歯の間に隙間ができた(ブラックトライアングル)
- ●歯が揺れるようになった
- ●口呼吸になった
- ●顔と歯並びのバランスがおかしくなった
- ●歯をたくさん削られた
- ●歯が沁みるようになった
- ●歯の神経が死んでしまった
などの問題が考えられます。
歯を抜かない治療の場合、歯を並べたり引っ込めたりするスペースがないため、口元が出たり、出っ歯が治らなかったりということが起こりやすいです。非抜歯治療では、歯並びを広げたり、歯を削って小さくしてスペースを作ることが多いですが、無理に歯を抜かずに治療すると、その分歯並びを無理に広げる必要がでてきたり、歯をたくさん削ることになってしまいます。治療後に歯が沁みたり、後戻りのリスクも高くなってしまいます。やはり何事もそうですが、無理して治療するのはいい結果に結びつかないことが多いです。もちろん歯を抜いて治療する場合にもリスクはありますので、次回は「歯を抜く矯正治療」のリスクについて書いていきたいと思います。
2025月01月01日
院長 大西 秀威