取り外し可能なマウスピース型矯正装置(インビザライン)でよくある誤解に、アライナーと呼ばれるマウスピース1つをずっと入れておけば勝手に歯が並んでいくと思われている方がおられます。アライナーは定期的に新しい物に交換することが必要で、同じアライナーをずっと入れ続けていても歯が動いていくわけではありません。今回はマウスピース型矯正装置(インビザライン)でどのようにして歯が動いていくのかについてお話したいと思います。
マウスピース型矯正装置(インビザライン)ではまず現在の歯並びの型取りを行い、アライナーを作製します。この時に今の状態よりほんの少し(最大で約0.25mm)歯を動かした状態をコンピューター上でシュミレーションしてアライナーを作製します。作製されたアライナーを口の中に装着すると、歯にぴったりとはまりますが、アライナーはわずかに歯が動いた状態で作られているため、少したわんで歯に装着されている状態になります。たわんで装着されたアライナーはその復元力で元の形に戻ろうとします。この復元力が歯を動かす基になります。アライナーが歯にぴったりとはまっていれば、アライナーが元に戻ろうとする力に合わせて歯も動いていきます。歯が予定通り動けば、その位置からまたわずかに動かした状態のアライナーを装着して、ほんの少しだけ歯が動きます。これを約7~10日ごとに繰り返して、少しづつ少しづつ歯を動かしていくことになります。
アライナーで設計通りに歯が動いていくかどうかのカギになるのが、アライナーと歯の適合具合(どれぐらいぴったりはまっているか)と、アタッチメント(歯に着けられた突起)です。アライナーと歯の適合を良くするためには、歯の形態を正確に型取りすることが必要です。これまではシリコン印象という方法でマウスピース型矯正装置(インビザライン)の型取りを行っていました。シリコン印象は通常の型取りの方法に比べて、非常に精密な型取りが可能なのですが、歪みや収縮などがごくわずかですがありました。当院では光学3D口腔内スキャナー「iTero element(アイテロ エレメント)」を導入いたしました。スキャナーで歯並びの状態をスキャンすることにより、歯並びの状態をより精細で精密にコンピューター上で再現することができるようになりました。スキャンしたデータを基にアライナーを製作することにより、より正確に歯を動かすことが可能となります。
アライナーをしっかりと装着していただくのは、マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療の基本ですが、歯の表面は滑らかでツルツルしているので、アライナーが歯の表面で滑ってしまって、たわみの力が上手く歯に伝わらない場合があります。アライナーが滑ってしまわないように歯につける突起がアタッチメントです。アタッチメントを着けることにより、アライナーと歯がしっかりと噛み合い、歯がアライナー通りに動いていくことになります。詳しくは「マウスピース型矯正装置(インビザライン)にアタッチメントはなぜ必要なの?」のコラムをご覧ください。
アタッチメントを歯に着けて、アライナーを精密に作製しても、アライナーが歯にぴったりとはまっていない状態で装着していると、歯は予定通りには動いてくれません。歯が予定通り動かないばかりか、思わぬ方向に歯が動いてしまい、治療が複雑になったり、治療期間が長くなってしまう原因になることもあります。マウスピース型矯正装置(インビザライン)で治療をされる方は、アタッチメントが外れていないか、アライナーがぴったりと歯にはまっているか、浮いているところはないか、装着のたびによく確認していただきたいと思います。
注意事項
- ※マウスピース型矯正装置(インビザライン)は医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認医薬品です。
- ※マウスピース型矯正装置(インビザライン)はアラインテクノロジー社の製品であり、インビザラインジャパン社を介して入手しています。
- ※国内にもマウスピース型矯正装置として医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けているものは複数存在します。
- ※マウスピース型矯正装置(インビザライン)は1998年にFDA(米国食品医療品局)により医療機器として認証を受けています。
- ※マウスピース型矯正装置(インビザライン)は完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、承認薬品を対象とする医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合がありあります。
2017月10月22日
院長 大西 秀威