Column

院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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歯並びはいくらでも広げられるわけではないのです

正常な咬み合わせの状態  舌側傾斜の状態拡大しすぎの状態

新年あけまして、おめでとうございます。

本年も大西矯正歯科クリニック並びにこのコラムを何卒よろしくお願いいたします。

矯正相談に来られる患者さんに、歯を抜く必要があるなら治療したくないと言われることがあります。軽度のガタガタや前突であれば、歯を抜かなくても治療可能なことがほとんどですが、重度のガタガタや前突、口元の突出などがあれば、どうしても抜歯が避けられないがあります。今回はその理由についてお話したいと思います。

歯のガタガタや前突を治療しようとすると、何らかの方法で歯を並べる隙間あるいは歯を後ろに引込めるためのスペースを作らなければ、いくら装置をつけていても治すことはできません。その隙間を作る方法として歯を抜くという手段をとるですが、歯を抜かないで隙間を作る場合どうするかというと、歯並びを広げるか歯の横部分を削って歯の幅を小さくするかいずれかの方法になります。歯の横部分を削る方法については、以前のコラムで説明したように、削れる量に限界があるのですが、歯並びを広げる方法にも限界があります。

奥歯から前から輪切りにしたような状態で見てみると、奥歯はまっすぐ萌えているわけではなく、少し内側に傾いて萌えています。矯正治療で歯並びを広げる際には、この内側に傾いている奥歯を起こしていくことになります。歯の萌えている角度には、安定できる適正な角度というものがあり、それを超えて歯を起こしても、歯はいずれ内側に傾いていってしまいます。この状態では、歯並びは安定しないばかりか、咬み合わせも悪くなってしまい、しっかりと物を咬めなくなってしまいます。

歯並びを広げる治療は、特に子供の治療でよく行われます。成長を利用して、歯並びを広げて歯を抜かずに治療できることを目指していきますが、適正な角度を超えて広げても安定しないのは、子供でも同じです。子供の時から治療したからと言って、必ず歯を抜かずに治療できるわけでは決してありません。子供の時から治療しても、最終的に歯を抜くことが必要になる場合も少なからずあります。歯並びを広げ過ぎて、しっかり咬めなくなったり、後で後戻りしてまたガタガタになってしまったら、元も子もないからです。

矯正治療において歯を抜くか抜かないかは、治療の「手段」であって「目的」ではありません。当院では、歯を抜かないことを治療の目的にしているわけではありません。形態的にも機能的にも審美的にも問題のない安定した歯並びを作ることが、矯正治療の最終目的だと考えています。

2017月01月22日

院長 大西 秀威