Myofunctional Therapy

歯は歯槽骨という骨の上の決まった位置に萌えてきているように思われがちですが、その萌える位置は歯の周りの筋肉や粘膜の影響を受けています。歯の外側には頬や唇の筋肉が、歯の内側には舌の筋肉があり、そのバランスのとれる位置に歯は並んでいます。
矯正治療で歯並びを綺麗にしても、歯並びとその周りの筋肉のバランスが上手く調和していないと歯並びがまた悪くなってしまう可能性があります。
口腔筋機能訓練(舌訓練、Myo-functional Therapy)は、頬や唇、舌などのお口のまわりの筋肉の悪い癖や機能異常を改善したり、筋肉の機能力を利用して不正咬合を改善するトレーニングです。

舌の位置について

人が楽にしている時(安静時)、口の中で舌の先は左上の図のように上前歯の裏側の少し後ろ側についており、通常舌は持ち上がっている状態になっています。この状態であれば、外側からの唇や頬の筋肉圧と内側から舌の筋肉圧がバランスよく歯にかかっています。歯の周囲の筋肉圧のバランスが整っていると、歯は安定して良好な位置を保つことができます。

しかし、右上の図のように口がポカンと開いていて、唇や頬の筋肉圧が弱く、舌の筋肉圧が強い場合や安静時に舌が持ち上がらずだらんとお口の中で下に落ちている(低位舌)と前歯に舌の力が強くかかってしまいます。そのため、前歯が舌の力で前に押し出され、開咬や下顎前突などの不正咬合の原因となります。

安静時に問題が無い場合でも、物や水を飲み込む際に上下の前歯の間に舌が飛び出してくる場合があります。これを異常嚥下癖といいます。このような癖を続けていると舌が前歯を裏側から押す力がかかりますので、開咬や上顎前突、下顎前突、上下顎前突などの不正咬合の原因となります。また指しゃぶり(吸指癖)や唇、爪を咬む癖(咬唇癖、咬爪癖)を長く続けていた場合も上下の前歯が咬み合わなくなり、開咬や上顎前突になることがあります。咬み合わない前歯の間の隙間を埋めるために舌を前歯の間に挟んでいることもあります。

口腔筋機能訓練(舌訓練)は不正な口腔習癖を取り除き、お口の周囲の機能を正しく整えることにより、歯や顎骨の正しい成長発育を促し、不正咬合になるのを未然に防いだり、改善することを目的としています。
大人の方では、治療後の後戻りの予防に役立ちますので、舌の位置は非常に重要です。