当院では、外科矯正の手術は阪大病院(大阪大学歯学部附属病院)およびその関連病院にお願いしています。患者さんの中には、ご自身がいつもお世話になっている病院で手術したい、あるいは知っている先生に手術してもらいたいとおっしゃられる方がおられます。残念ながら、当院の外科矯正の手術は、どの病院でも可能というわけにはありません。手術は原則として、当院が提携している阪大病院かその関連病院でしていただくことになります。今回は、なぜ当院が阪大病院と連携しているのかについてお話したいと思います。
当院で行っている外科矯正では、ほとんどの場合、上下の顎両方を手術することになります。下顎のみを手術する方法もあるのですが、手術の安定性が悪くなる可能性があることと、上顎を移動できないので顔立ちのバランスがうまくとれず、気になる部分が改善できないことがあるからです。下顎だけの手術の方が体への負担は少なくなりますが、折角入院して全身麻酔の手術をするのであれば、できるだけ安定性のよい、よりバランスのとれた顔立ちにできる上下顎手術の方がメリットが大きいと思います。
上下顎の手術をする場合、ダブルスプリント法という方法で顎の位置を決めて手術をします。ダブルスプリント法というのは、まず上顎を手術し、下顎を基準にして上顎の位置を決めて、上顎の位置が決まってから下顎を手術し、下顎の位置を決める方法です。2枚のスプリントを使用することから、ダブルスプリント法と呼ばれます。スプリントにより骨の位置を決めるのですが、従来はレントゲン画像や顎態模型、顔写真、患者さんのご希望などを総合的に加味して移動量を決めていました。しかし、歯の型や咬み合わせはどうしても歪みやその時々の揺れがあることと、レントゲン画像は2D画像のため、3次元的にどのように歪みやずれがあるかの判断が難しく、また骨を動かした時に骨のどの部分がどの程度干渉するかなどの予想が困難で、どうしても多少の誤差やずれなどが起こる可能性がありました。
阪大病院では、レントゲン画像に加えCTを撮影し、3D画像上で骨を動かして手術後のシュミレーションを作成しています。3D画像でシュミレーションすることにより、3次元的に精密な予想をすることが可能となり、骨を動かした際にどの部分がどの程度干渉するのか一目瞭然で、移動量の限界やどの程度骨の削除が必要になるか等が明瞭となります。また歯の型を基準にスプリントを作るのではなく、シュミレーション画像をもとに3Dプリンターで3Dモデルを作成し、3Dモデルでスプリントを作成するため、スプリントの制度も非常に高いものとなります。結果としてとても精度の高い安定性の良い手術が可能となります。
以前の方法に比べ、3D画像を用いたシュミレーションを元に手術をすると、予測実現性や手術後の安定性がとても高いことを実感しています。阪大謬院以外の病院では、従来通りの方法で手術しているところも多いです。当院ではより精度の高い手術を患者さんに提供するため、外科矯正の手術は原則として阪大病院かその関連病院に依頼させていただいておりますので、ご了承いただきますようお願いいたします。
2025月08月03日
院長 大西 秀威