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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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マウスピース型矯正装置(インビザライン)は1日21時間以上の装着が条件です!

インビザライン装着時間

当院では固定式のマルチブラケット装置と取り外し可能なマウスピース型矯正装置(インビザライン)両方の治療を行っており、患者さんの様々なご要望にできるだけお答えできるようにしています。ワイヤータイプのマルチブラケット装置を希望される患者さんの中には、「マウスピースではちゃんと治らないんじゃないですか?」とマウスピース型矯正装置(インビザライン)に対して懐疑的に思っておられる方がおられます。マウスピース型矯正装置(インビザライン)は当院からの指示を守って正しく使用していただければ、歯を正確に動かすことができますし、ほとんど見立たず、歯磨きも今まで通りできますので大変良い装置なのですが、まれに治療が上手く進まないことがあります。今回はマウスピース型矯正装置(インビザライン)で治療が上手くいかない原因についてお話したいと思います。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療で一番問題になるのが、マウスピースのトレイ(インビザラインではアライナーと言います)が歯に合わなくなることです。マウスピース型矯正装置(インビザライン)でこのアンフィットを起こしてしまう最大の原因は、アライナーの装着時間が短いことです。アライナーは原則として1日中装着が必要で、外してもよいのは食事と歯磨きの時だけです。1日3食として、1回の食事・歯磨きを1時間と考えていただいて、1時間×3回=3時間は外しても大丈夫ですとお話ししています。ということは、最低限1日21時間の装着が必要になるということです。この21時間以上という時間を守っていただくことが、マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療では大変重要です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)では治療の最初から最後までのアライナーを一気に作ってしまいます。治療途中で一度アンフィットが起こってしまうと、調整することはほぼ不可能です。アンフィットが起こったまま装着を続けても、ずれがどんどん大きくなって予定通り歯が動かないばかりか予想外の動きが起こってしまうこともあります。アンフィットが一旦起こってしまうと、基本的にはもう一度歯並びのスキャンをしてアライナーを作り直すしかありません。その分治療期間が延びたり、治療ゴールを見直さなければならない場合もあります。

私の経験上、中学生や高校生の方よりも大人の方の方がアンフィットが起こることが多いです。それはなぜかというと、大人の方の歯が動きにくいからではなく、アライナーを着ける時間が不規則になりやすいからです。アライナーのアンフィットを起こした患者さんに聞いてみると、「仕事終わりに飲みに行って着けられない時がありました」とか「仕事上で人と会わないといけないので、着けらないんです」などとよく言われます。社会人の方が夜飲みに行ったり、大事な人と会わないといけないことがあるのはよく理解できます。その事情はよくわかるのですが、マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療は1日21時間の装着が最低条件です。その条件が守られなければ、治療はやはりうまくいきませんし、それ以上にできることは残念ながらありません。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)を希望される患者さんは、本当に1日21時間以上アライナーを着けることができるのか、よくご検討いただきたいと思います。もし自信がないということであれば、ワイヤータイプのマルチブラケット装置を選んでいただくのも一つです。

※マウスピース型矯正装置(インビザライン)は完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

2018月10月21日

院長 大西 秀威