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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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他院でレントゲンを撮ったけど、続けて検査で撮影しても大丈夫?【前編】

パノラマビス(咬合法)

セファロ(側面)セファロ(正面)

当院で矯正治療を開始する場合、まず検査からスタートしますが、その際に何枚かレントゲン写真を必ず撮影します。矯正の検査の前に別の医院でレントゲンを撮ったばかりだけど、さらにレントゲンを撮っても大丈夫かなと心配になる方もおられることと思います。今回は矯正歯科のレントゲンについてお話したいと思います。

矯正歯科で撮影するレントゲンとして、歯並び全体の状態を把握するためのパノラマレントゲン、上下の顎の大きさ、位置、バランスなど骨格の状態や歯の萌えている角度などを計測するセファログラムレントゲン(正面と側面の2枚)、上の前歯の根っこに問題がないか、過剰歯がないか等を確認するビス(咬合法)レントゲン等があります。これらのレントゲンは、原則としてすべての患者さんで治療前に必ず撮影します。

レントゲン写真には、アナログ式とデジタル式があり、アナログ式に比べデジタル式では、放射線の被曝量を1/4~1/10程度に大幅に軽減することができます。また、アナログ式では必須の現像という工程が必要ないため、撮影後すぐにパソコンのモニターでレントゲンを確認することができます。当院で使用しているレントゲンは、ビスレントゲン以外はすべてデジタルレントゲンになっています。なぜビスレントゲンだけアナログ式になっているのかというと、ビスレントゲンのデジタル式というのが今現在存在しないためで、やむを得ずアナログ式を使用しています。もし今後デジタル式のビスレントゲンができれば、すぐに導入する予定です。

レントゲンによる被曝量を表す単位として、Gy(グレイ)とSv(シーベルト)というものがあります。Gyは吸収線量と呼ばれるもので、物質が単位質量あたりに放射線から受けるエネルギー量を示す値です。Svは実効線量といい、放射線が「人間」に当たったときにどのような健康影響があるのかを評価するための値です。Svは人体にどのような影響があるかを直接示す値ですので、通常こちらを使用します。レントゲン写真による被曝量は、メーカーや機種により様々ですが、矯正歯科で撮影するレントゲンの大まかな被曝量は以下のようになります。

  • パノラマレントゲン
    ・アナログ0.02~0.03mSv
    ・デジタル0.005~0.01mSv
  • セファログラムレントゲン
    ・アナログ0.03~0.05mSv
    ・デジタル0.002~0.01mSv
  • デンタル(ビス)レントゲン
    ・アナログ0.01~0.02mSv
    ・デジタル0.001~0.005mSv
  • 歯科用CT=0.05~0.1mSv

当院で矯正の検査をしたとすると、パノラマレントゲン1枚とセファログラムレントゲン2枚、ビスレントゲン1枚を撮影するので、その被曝量は多めに見積もったとして、

0.01+(0.01×2)+0.02=0.05mSv

となります。

2016月11月20日

院長 大西 秀威