他院でレントゲンを撮ったけど、続けて検査で撮影しても大丈夫?【後編】

レントゲン被曝

前回のブログで、矯正歯科で撮影するレントゲンについてお話させていただきました。実をいうと、放射線は自然界にも存在し、レントゲン撮影などを受けなくても人体は常に被曝しています。これを自然放射線といいます。自然放射線の原因として、宇宙空間から飛来する宇宙線と地殻から放出される天然放射性核種が挙げられます。

自然放射線によりどれぐらい被曝するかというと、宇宙線から年間約0.39mSv、地殻・建材などからの自然放射性核種(天然放射性核種)から年間約0.48mSv、体内に存在している自然放射性核種から年間約0.29mSvの内部被曝を受けています。これらに加え、空気中に含まれているラドンから年間1.26mSvの被曝を受けています。合計すると、自然界から世界平均で年間2.4mSv前後の被曝を受けていることになります。

自然放射線からの被曝量は地域によって異なり、日本は世界平均と比べ少なく、年間1.4~1.5mSv程度とされています。自然放射線の多い地域として知られるのが、ブラジル南東岸のガラパリやインドのケララ州のモナザイト岩石地帯です。モナザイトはウランやトリウムを多く含む岩石で、年間10mSv程度の自然被曝量があります。これらの地域では健康調査が行なわれましたが、ガン発生率や生まれる子供の性比、先天性異常、流産、死産、乳児死亡、受胎率、出産率などに他の地域との差は認められませんでした。

宇宙線は、高度が高く大気が薄くなるとその分強くなるので、飛行機に乗ると地上にいるより被曝量が大きくなります。東京からニューヨークまで飛行機に乗ると、1回当たり約0.2mSv被曝すると言われています。パイロットやキャビンアテンダントの方は、必然的に被曝量が多くなるはずですが、やはり健康被害があった等という話を聞いたことはありません。当院で1回の検査で被曝する量が仮に約0.05mSvであったとして、飛行機でニューヨークに行く際に被曝する約0.2mSvと比べても、かなり小さい数字です。

人間の被曝量の安全基準は、一般的に年間で100mSv以下と言われています。この数字は、国際放射線防護委員会(ICRP)が過去の原爆・水爆実験や原発事故を分析し、被曝量が100 mSv/年以下であれば、放射線の影響を最も受け易いと考えられる胎児に対しても、影響が無かったと推定されることを根拠にしています。この数字を基にすれば、当院で撮影するレントゲンの年間撮影可能枚数は、

・デジタルパノラマレントゲン 10,000~20.000枚
・デジタルセファログラムレントゲン 10,000~50,000枚
・ビスレントゲン 5,000~10,000枚

ということになり、途方もない数字になります。年間で10,000枚レントゲンを撮影するということは、1年間毎日27枚以上レントゲンを撮影し続けることに相当しますので、現実的にはあり得ません。当院で撮影するレントゲンによる被曝量が、いかに少ないかをご理解いただけることと思います。

このように当院で撮影するレントゲンは、人体には全く影響のない放射線量です。念のため、撮影の際には防護エプロンを着つけて頂いています。ただでさえ少ない放射線量を鉛の入ったエプロンを着けていただくことにより、必要でない部位への被曝をほぼゼロにしています。他院でレントゲンを撮影した直後に、また続けてレントゲンを撮影するというのは、気分的にあまりいいものではないかもしれませんが、体には何ら影響はありませんので、ご安心いただきたいと思います。

2016年12月5日

院長 大西 秀威