呼吸は必ず鼻で!

「あいうべ」 口の体操あいうべ

先日、「あいうべ体操」の考案者として有名な今井一彰先生のご講演を聞かせていただく機会がありました。今井先生は、これまで原因不明と言われていた全身の様々な病気や症状が、実は口呼吸が原因で起こっていることを見出したパイオニア的存在の内科の先生です。「あいうべ体操」というのは、今井先生が考案された口呼吸を鼻呼吸に変える口の体操です。

口呼吸と鼻呼吸

これまでも、当院では口腔筋機能訓練(MFT)を通じて、正しい舌の位置や口を閉じて鼻で呼吸する大切さを患者さんにお伝えしてきました。口で呼吸していると、上下の前歯の間に舌が入ったり、下の前歯の裏側に舌が着きやすくなり、舌で前歯を押してしまうため、開咬や空隙歯列、下顎前突になりやすくなります。このような状態が続いていると、例え矯正治療で歯並びを綺麗に整えても、また後戻りしてしまう可能性が高くなってしまいます。口呼吸が歯並びに大きな影響を与えることは、以前からよく知られていたことですが、今井先生のお話を聞いて、歯並びだけではなく全身に様々な弊害をもたらすことがわかりました。

哺乳類は、息をするのは鼻で物を食べるのは口といった具合に、鼻と口の役割は厳格に分けられています。例えば、犬が暑いときに口で「ハア、ハア」と呼吸しているように見えるのは、実は舌を出して気化熱で温度調整をしているだけで、呼吸は鼻でしています。人間も生まれた時は、鼻と口の役割は分かれていて、鼻でしか呼吸できないようになっています。しかし、生後3ヵ月頃に、のどの奥の喉頭蓋という部分が下がって、気管と食道がつながるようになります(喉頭下降)。これは、人間が複雑な音や言葉をしゃべることができるように進化した結果と考えられています。こうして気管と食道がつながることにより、他の哺乳類にはできない口で呼吸するということが、人間には可能になってしまったのです。

鼻の中には、鼻毛や粘膜に線毛が生えており、粘膜には粘液が流れています。空気中には、小さなホコリや細菌、ウイルス、花粉など様々な異物や病原菌が含まれています。空気中の異物は、鼻毛や線毛、粘液に付着して絡め取られ、鼻水となって排出されます。また、鼻の奥には扁桃リンパ組織という免疫組織があり、鼻の中を通過してしまった異物を防御するようにできています。天然の「二重のマスク」になっているわけです。

鼻の穴から咽頭までの気道は血流が豊富で、鼻から入った冷たく乾燥した空気は、気道で暖かく湿った状態になります。口を閉じて鼻で呼吸していると、舌は自然と上顎の裏側に着くようになります。驚くことに、舌が上顎に着くか着かないかによって、鼻腔の温度は3℃も変わるそうです。また、乾燥した空気がそのまま気管に入ると、粘膜を乾燥させてしまうため、のどや器官を傷める原因にもなります。ウイルスは、熱や湿度に弱く、空気が体温に近い温度や高湿度になると死滅します。鼻は「加湿機能つきの空気清浄機」というわけです。

口で呼吸してしまうと、「二重のマスク」の機能も「加湿機能つきの空気清浄機」の機能も果たせなくなってしまいます。次回のコラムでは、口呼吸により起こる様々な弊害についてお話したいと思います。

2016年3月24日

院長 大西 秀威