矯正治療で歯を削っても大丈夫?

歯の構造エナメル質の幅

矯正治療では、ガタガタの歯を並べたり前歯を後ろに引っ込めるために、歯を抜かなければならない場合があります。しかし、ガタガタの量や前歯が出ている量がわずかで歯を抜くほどでもない場合、歯を抜くかわりに歯の横の部分を削って1本1本の歯の大きさを小さくして隙間を作ることがあります。また、上下の歯の大きさのバランスが合わない場合や歯と歯茎の間に隙間がある場合(ブラックトライアングル)などにも歯の側面を削って治療することがあります。矯正治療で歯を削って大丈夫なの?と心配される方もおられると思いますので、今回はその疑問にお答えしたいと思います。

歯の構造はどうなっているかというと、3層構造でできています。一番表面の目に見える部分は、エナメル質といって、白くツルツルした硬組織でできています。このエナメル質は、実は生体で最も硬い組織で、虫歯にもなりにくい組織です。エナメル質の幅は、切端部の最も厚い部分で約2.5mm程度、横の部分で約1~1.5mm程度です。エナメル質には神経も細胞も存在せず、ほぼ無機質でできているため(約96%が無機質)、例え虫歯ができても痛みを感じることはありません。

エナメル質の下には、象牙質という硬組織があります。象牙質はやや黄色っぽい色をして、エナメル質より少し柔らかい組織です。象牙質がエナメル質と最も違うところは、象牙質には象牙細管という非常に細い管が走っていて、その中に神経の細胞が入り込んでいるため、痛みを感じることです。エナメル質にできた初期の虫歯が痛みを感じないのに対し、進行すると痛みを感じるようになるのはこのためです。

象牙質のさらに下、歯の中心部分には歯髄があります。一般的に「神経」と言われている部分です。歯髄は軟組織で、象牙質を産生したり、歯の感覚を司っている歯の中枢部分です。虫歯が象牙質からさらに進行すると、ある日激痛が走るようになります。これは虫歯が歯髄に到達し、歯髄が炎症を起こしている証拠です。こうなると歯髄(=神経)を抜かないといけなくなります。歯髄を取ってしまうと、歯は死んだ状態となり、黒く変色したり、もろくなって割れやすくなったりします。このように、歯は硬いエナメル質が弱い象牙質や歯髄を守る構造となっています。

歯を削ってしまうと歯が弱くなってしまうんじゃないかと心配になる方がおられると思います。確かにエナメル質をすべて削ってしまうと、虫歯になりやすくなったり、歯がしみやすくなったりしますので、エナメル質が無くなってしまうほど削るわけにはいきません。エナメル質の幅が約1~1.5mmですので、削れる量はせいぜい0.3~0.5mm程度です。これぐらいの量であれば、歯としては問題はありません。片側でわずか0.5mmでも、両側を削れば歯1本につき1mmの隙間ができますので、6本削れば単純計算で6mmの隙間ができることになりますので、かなりの隙間を確保することができます。

エナメル質が無くなるほど削らないにしても、一気に削ってしまうと歯がしみたりすることもあるので、通常はやすりのようなもので、何回かに分けて少しずつ削っていきます。こうすることにより、削り過ぎや知覚過敏になるのを防ぐことができます。歯を削ることは全員の患者さんにするわけではありませんが、治療法の一つとしてご提案させていただく場合があります。歯が弱くなるほど削ったりはしませんので、どうぞご安心ください。

2015年11月23日

院長 大西 秀威