歯は一生を通じて動き続けています

ボンディッドリテーナー以前のコラムで、矯正治療後には後戻りという現象が起こり、それを防ぐために保定装置の装着が必要になることをお話しいたしました。当院では約5年間保定装置を着けていただき、それで問題なければ保定装置を外して、完全に矯正治療が終了ということになります。

では、5年間保定装置を着けていれば、その後歯は全く動かないかというと、残念ながらそういうわけにはいきません。5年間保定装置を着けていただければ、矯正後の後戻りというのはほとんどありませんので、保定装置を外しても急激に歯並びが動いてしまうことはまずありません。しかし、10~20年の長いスパンで考えると、その後も歯は少しずつ動いてしまいます。これは矯正治療を受けていても受けていなくても、どんな方でも一様に起こる生理現象です。後戻りというよりも、自然な歯の動きによる歯並びの変化と考えて頂いた方がいいと思います。

なぜ歯は一生を通じて動き続けるのかというと、その理由ははっきりとはわかりません。おそらく加齢に伴う歯槽骨(歯が萌えている部分の骨)の形態や骨量の変化、唇や舌、頬などの口周囲の筋肉や粘膜のバランスの変化、歯の摩耗や治療による形態の変化、顎関節の形態の変化などが原因になっているのではないかと考えれます。このような変化はどんな方でも起こるものですので、経年による歯の移動もどんな方にも起こることになります。

後戻りや経年による歯の移動が最も起こりやすいのは、下顎の前歯です。下顎の前歯は、歯の大きさが小さく、歯の根も細く短いため、周囲の影響を受けやすいからです。上下の歯は咬み合わせになっているため、下の歯が動くと咬み合っている上の歯も動いてしまいます。下顎の前歯にガタガタが出てくると、上顎の前歯にもガタガタが出てくることが多いです。そのため、治療後の綺麗な歯並びを長く保つには、特に下顎の前歯を動かないようにしておくことがポイントになります。

では、治療後の歯並びを綺麗に保つにはどうすればいいかというと、基本的に保定装置を長く着けていただくしかありません。当院では最低5年間着けていただいていますが、歯が動くことがご心配な方には、それ以上継続して使っていただいてももちろん問題ありません。また、ボンディッドリテーナーと言って歯の裏側にワイヤーを直接貼り着けて、歯を完全に固定する装置を着けておけば、ワイヤーが折れたり外れたりしない限り、前歯が動く心配はありません。 ただ、ワイヤーを着けたままにしておくと、歯垢や歯石がたまりやすなりますので、歯周病に罹患するリスクが高くなります。ボンディッドリテーナーを長く着けておくのでしたら、矯正歯科の定期検診が終了した後もお近くの歯医者さんやかかりつけの歯科医院で定期検診をうけていただき、歯垢歯石を取っていただく必要があります。

このように、生理的な歯の動きはどんな方にも起こりますが、対処する方法もあります。当院では、治療後に歯並びや咬み合わせが綺麗になるのはもちろんのこと、その状態をできるだけ長く維持できるように努めています。

2015年7月22日

院長 大西 秀威