自分の経験から感じた治療中の苦労と喜び【後編】

初診 治療中 治療後

私が着けた装置は、昔ながらの金属製のブラケット装置でした。幸か不幸か私は男子校に通っていたので、周囲の目をあまり気にする必要はなかったのですが、それでも金属製の装置がギラギラして目立つのは嫌やなあと思っていました。その当時は男子校ということもあり、同級生の中で矯正をしている子は皆無でしたので、余計に気になりました。しかし、見た目が気になっていたのはほんのわずかな時間だけでした。装置を着けた直後は物珍しさもあって周りの視線を感じました。しかし、2、3日もたつと矯正器具を見慣れたのか、器具について視線を感じたり、何か言われることはほとんど無くなりました。周囲が矯正器具が着いているものと認識してくれるようになったため、その後見た目について何か言われることはまったくありませんでした。装置が外れた時でさえ、自分から言わないとなかなか気づいてもらえなかったぐらいです。

私の経験からすると、周りの人は他の人の口を自分が気にするほどには見ていないんだなあと思いました。当院の患者さんにも同じような経験をされた方が多くおられ、「最初は色々言われたけど、途中から何も言われなくなった」とか「装置が外れたけど、誰にも気づいてもらえなかった」とかよく言われます。見た目が気になって矯正治療を躊躇されている方も多くおられると思いますが、周囲は意外なほどすぐに受け入れてくれるものです。以前より矯正治療が普及した現在ではなおのことです。勇気を持って是非一歩を踏み出していただきたいなあと思います。

装置を着けた違和感は最初はありましたが、1週間もすると慣れてしまいました。最初に装置を着けた時は、口内炎ができたり、舌に傷ができたり、頬を咬んでしまったりで、口の中に傷ができました。こんなんがずっと続くのかと絶望的な気分になりましたが、1週間もすると自然と口内炎ができなくなり、舌や頬を咬まなくなり、快適に過ごせるようになりました。人間の適応力は凄いもんだなあと思います。矯正装置を着けたばかりの頃は、傷がいっぱいできて悲しくなることがありますが、必ず慣れてきますので、頑張って乗り越えていただきたいなあと思います。

違和感と言えば、ブラケット装置が外れた後に着けるリテーナーもなかなか違和感がありました。リテーナーは取り外しができるので、気分的にはずいぶん楽なのですが、舌が装置に常に当たるので少々気持ち悪かったです。私の場合どちらかと言うと、ブラケット装置よりもリテーナーの方がなかなか慣れなかったのですが、毎日着けている間に徐々に慣れていきました。自分の経験からリテーナーを可能な限り薄く小さく作製し、違和感が少なくなるように工夫していますので、頑張って慣れていただきたいなと思います。

苦労話をいろいろ書きましたが、嬉しかったことも書いときたいと思います。嬉しかったのは何といっても装置が外れた瞬間です。装置が外れてツルツルの歯並びになった時の喜びは、何とも表現しがたいものがあります。これまでの苦労がすべて吹き飛んでしまいます。テカテカの歯並びになって初めてご飯を食べた時は、食べ物は詰まらないし本当に感動しました。食後の歯磨きの際も、歯並びが綺麗に並んでいるので、矯正治療をする以前より歯磨きはラクチンで、こんなんでいいんかなと逆に思ってしまったのをよく覚えています。この感動は経験した人でないとなかなかわからないと思うのですが、感覚的には登山をして山の頂上に着いた瞬間に、それまで霧に覆われていたのが、突然周囲が晴れて視界が開けたような感覚でしょうか。難題を乗り越えた、やり遂げた感がありますので、その喜び、達成感、満足感は本当に凄いものがあります。

装置が外れてからは、周りから歯並びが綺麗と言われることも多く、なんとなく自分に自信ができるというかやってよかった感を感じます。この感覚はなぜか年々強くなってきています。今掛け値なしに矯正をして良かったなと心から思います。歯並びは人の見た目を左右する大きな要素ですし、歯のブラッシングや衛生管理のしやすさを考えると、若いときに矯正しておいて良かったなと思います。矯正をしてくれた前院長である父親には、心から感謝しています。

今考えると親に言われて嫌々やっていた矯正治療でしたが、治療して本当に良かったなと思います。自分が矯正治療を受けていた頃は、将来自分がする側の人間になるとは思っていませんでした。自分が矯正治療する側になった現在、私は自分の経験から色々なことを患者さんにアドバイスできますし、苦労も理解できますし、喜びも共有することができます。今後も自分の経験を生かして、治療する側される側ではなく、患者さんと一緒に苦労を分かち合ってゴールに向かっていくような矯正歯科を目指して行きたいなと思っています。

※上記写真は不肖私の治療前、治療中、治療後の写真です。今見ると結構な八重歯ですね。

2013年12月4日

院長 大西 秀威