ブラックトライアングルはどうやって治すの?

ブラックトライアングルリプロキシメーションスペース閉鎖後

 前回のコラムで、矯正治療により歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができるのは、ある程度やむを得ないことであるというお話をしました。矯正治療でブラックトライアングルが出来ること自体は、異常なことではありませんので、必ず治療しないといけないというものではありません。しかし、せっかく矯正治療で歯並びが綺麗になっても、前歯の歯と歯の間に隙間があると気になってしまいます。矯正治療でブラックトライアングルが出来てしまったとき、どのように治療するのかお話したいと思います。

前回のコラムでお話したようにブラックトライアングルができる原因は、歯茎の中の骨(歯槽骨といいます)の高さが低下していることにあります。素直に考えると、ブラックトライアングルを治すためには、低下した歯槽骨の高さを戻し、歯茎の高さを元のレベルまで戻してあげれば良いことになります。しかし、このようなことが可能かというと、現在の治療技術では非常に困難と言わざるを得ません。歯槽骨の歯の周りの一部分だけ高さが低下している場合などでは、元の高さに戻すことも比較的可能ですが、ブラックトライアングルができるほど歯槽骨が全体的に低下してしまうと、元に戻すことは現実的には非常に難しいです。

ではどうするのかと言うと、一つの治療法は歯茎の移植という方法です。例えば、上顎の天井の部分(口蓋といいます)から歯茎を取ってきて、ブラックトライアングルの部分に移植すると言う方法です。歯茎を切り取った部分はどうなるのかというと、ちゃんと元通りに再生しますので、問題ありません。ただし、この方法は必ずしも上手くいくとは断言できません。ブラックトライアングができているということは、歯茎の中の歯槽骨の高さが低下しているので、歯茎だけを移植しても、また歯茎の高さが低下してしまう可能性があります。移植した歯茎が本来の高さで生着するかどうかは、やってみないとわからない部分がありますが、移植後に高さは少しづつ低下していくと考えていただいたほうがいいと思います。

もう一つの方法は、ブラックトライアングルがある部分の歯と歯の間を少し削って、歯と歯を寄せるという方法です。上の図のように、削った部分の隙間を閉じることにより、ブラックトライアングルを小さくして、目立たなくすることが可能です。しかし、この方法にも欠点があります。

1. 健康な歯を削らなければいけない。
2. 咬み合わせのバランスを合わせるために、上下の歯を削る必要がある。
3. 歯を削れる量に限度がある。
4. 歯の幅が小さい方には適応できない。

などです。

例えば、ブラックトライアングルが気になるのが、上の前歯の部分だけであったとしても、上の歯だけを削ってしまうと、上下の歯の大きさのバランスが崩れてしまい、咬み合わせがうまく合いません。そのため、例え気になるのが上の前歯だけであったとしても、下の前歯も削って歯の大きさを合わせる必要があります。

この方法の最大の問題は、虫歯にもなっていない健康な歯を削らなければならないということです。歯を削ると歯が弱くなったり、虫歯になりやすくなったりするんじゃないかと心配される方もおられると思います。確かにたくさん歯を削ってしまうと、そのような心配が出てきますので、歯を削るといっても削れる量には限度があります。

歯の表面にはエナメル質という白くて硬い虫歯になりにくい組織があります。その厚さはおおよそ1~2mm程度です。エナメル質の下にはやや黄色っぽい象牙質という組織があります。象牙質という組織は、エナメル質よりも軟らかく、虫歯になりやすい組織です。もしエナメル質をすべて削りとってしまうと、象牙質が歯の表面にでてきてしまい、虫歯になりやすくなったり、歯がしみやくなったりするため、必ずエナメル質の範囲内でしか削ることはできません。エナメル質の厚みは1~2mm程度ですから、削れる量はせいぜい0.6~0.7mm程度が精一杯というところです。歯の両側を削るとすると、最大で1.5mm弱ということになりますが、歯がしみたりしないように安全を見越して、削る量は1mm程度に抑えることが多いです。そのため、それ以上にブラックトライアングルが大きい場合は、完全には解消できないことになります。

また、元々歯の大きさが小さい方の場合、歯を削ってしまうと歯が細長くなってしまい、逆に見た目が悪くなってしまう可能性があります。そのため、歯の幅が小さい方には、歯を削る方法はお勧めいたしません。
ブラックトライアングルができている箇所が一箇所だけであれば、歯の角度を少し変えて、隣り合った歯の根を寄せることにより、ブラックトライアングルを目立ちにくくすることも可能です。

このように、ブラックトライアングルを根本的に治す方法は、残念ながら今のところありません。もしブラックトライアングルができてしまった場合は、ブラッシングを丁寧にしていただき、それ以上歯茎が下がらないように注意していただくことが大切です。ブラックトライアングルが気になる場合は、上記の方法の利点欠点をよくご理解いただいたうえで、最適な方法を検討させていただきます。

2013年5月7日

院長 大西 秀威