親知らずって抜いたほうがいいの?

当院に初診相談にこられた患者様や治療後に親知らずが萌えてきた患者様などに「親知らずは抜いたほうがいいですか?」とよくご質問を受けます。親知らずが萌えてきたら、必ず抜歯しないといけないと思われている方もおられますが、決してそうではありません。ケースバイケースなので一概には言えませんが、どんな場合に親知らずを抜いたほういいのかお話したいと思います。

親知らずは別名を智歯、正式には第三大臼歯といい、前の歯から数えて8番目に萌えている歯のことをいいます。縄文人やオーストラリアの原住民であるアボリジニの骨格標本を見ると、親知らずが口の中に萌えて、上下が親知らずがしっかり咬み合っていることが多いです。それに対し現代日本人では、顎の大きさが小さくなってきているため、親知らずが萌えるための顎の骨のスペースが足りない場合がよくあります。そのため、親知らずが萌えてこなかったり、斜めや横に向いてしまったり、親知らず自体が先天的に無い場合も珍しくありません。また、親知らずは歯並びの中で一番奥にある歯なので、歯磨きが非常にしにくく、真っ直ぐに萌えてきていても虫歯や歯周病になりやすい歯でもあります。
幸か不幸か親知らずが元々無い場合は問題ないのですが、親知らずが存在する場合は、抜歯すべきかどうか判断しなければなりません。

親知らずを抜いたほうがいい場合として、

1. 親知らずに大きな虫歯がある場合
2. 親知らずが歯周病になっている場合
3. 親知らずが歯並びの外側などにそれて萌えている場合
4. 親知らずが極端に伸びすぎて、反対側の歯茎を咬んでいる場合
5. 親知らずの一部が歯茎から出たまま萌えてこない場合
6. 親知らずが斜めや横に向いて萌えている場合
7. 親知らず周りの歯茎の炎症を繰り返し起こす場合

などが挙げられます。

親知らずは歯並びの一番奥に萌えてきますので、真っ直ぐに萌えていてもブラッシングを適切に行うのは難しい歯です。そのため、どうしても虫歯や歯周病になりやすくなります。大きな虫歯がある場合は、治療して被せ物をつけても、また虫歯になる可能性が非常に高いと思います。また、親知らずが歯周病になっている場合、放っておくと歯周病が前の歯に波及し、第二大臼歯も歯周病になってしまうことがあります。歯周病に罹患する原因の第一は不適切なブラッシングです。親知らずが歯並びの外側に萌えている場合も適切にブラッシングすることは非常に難しくなります。今後のお口の衛生管理を考えると抜歯したほうがいいと思います。

親知らずが元々無いという方も珍しくはないのですが、たとえば上の親知らずはあるのに下はないとか、その逆に下だけは存在するというような場合、親知らずが伸び続けてしまい、反対側の歯茎を咬んできてしまうことがあります。ずっと咬んでいると歯茎は炎症を起こしてしまいますので、食事の際や歯を咬み合わせた時に痛みが出ることがあります。このような場合も親知らずは抜いたほうがいいでしょう。

親知らずがある場合に一番問題になるのが、歯の一部だけが歯茎から出ていたり、まったく歯が出てこずに歯茎に埋まったままになっている場合です。レントゲンを撮ってみると、親知らずが斜めになって前の歯に引っかかっていたり、横に向いて萌えていることがよくあります。親知らずが斜めや横に向いてしまう一番の原因は、親知らずが萌える骨のスペースが足りないことですが、スペースが足りないにもかかわらず親知らずは伸び続けようとします。親知らずが斜めや横になっていると、伸び続けようとする力が前の第二大臼歯にかかってしまうことになります。そうすると第二大臼歯が押されて伸びてきてしまったり、横に倒れてしまったりして、せっかく矯正治療してもまた歯並びが悪くなってしまう可能性があります。

また、親知らずが斜めや横になって一部だけが萌えていたり、完全に歯茎の中に埋まっている場合、歯と歯茎の間に隙間が出来てしまい、そこに食べかすやプラークがたまって細菌が繁殖し、歯茎の炎症を起こすことがあります。これを智歯周囲炎といい、歯茎に痛みが出たり、口が開きにくくなったりします。ひどくなると顔や耳にも痛みが広がり、物を飲み込むことが難しくなることもあります。このような痛みを繰り返す場合は、やはり抜いたほうがいいですが、痛みが出てからでは麻酔が効きにくく抜歯しにくいため、痛くなる前に予防的に抜くことが多いです。

このように様々な場合で親知らずを抜いたほうがいいケースがあります。
ただし注意が必要なのは、親知らずが下顎の中を通っている下顎神経(下歯槽神経)の近くに存在する場合です。親知らずを抜歯すると神経に麻痺が出ることがあるので、無理に抜歯しないほうがいいこともあります。当院では親知らずを抜いていただく場合には、専門の口腔外科の先生をご紹介させていただきますので安心です。
また親知らずを利用して矯正治療を行うこともありますので、矯正治療をお考えの方は、親知らずを抜歯する前に一度矯正専門医にご相談いただくとよいでしょう

2012年12月10日

院長 大西 秀威